アレカラ、イチネン。

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 そんなこんなで、わたしも晴れてこの三月に、何とか卒業できることになった。両親は、ビックリするくらい喜んでくれた。そしてこの二人も、飛び上がるほどに――。 「卒業後の進路は考えてるのか?」 「おじさんさー、喋り方が学校の先生みたいだよ!」 「本当だ。ちょっと偉そうだよな。でもさ、こいつ会社の社長だし、僕の上司なの。だから大目に見てやってくれよ」 「そんなことはどうでもいいから、話してみろ」 「オヤジくさーい! でも、心配してくれてるんだよね。いつも有難うございます」  わたしがペコリと頭を下げると、二人が一瞬固まった。それも、思い切り目を瞠って……! ちょっとー、わたしが素直になっちゃいけないの!? もう、18だよ! ってツッコみたかったけど、グッとそれらを飲み込んだ。そう、もうわたしは18だから――  未だ、将来やりたい事は決まっていない。しかし、卒業後に就職するのは違うような気がする。そこで、資格取得が出来る専門学校に入学することを決めた。あらゆることを想定し、保険をかける意味合いでも特色のある学校を選んだらどうだろうかと、保健体育の先生がアドバイスしてくれた。 『万が一、大学で学びたいと思うようになったときに単位移行ができる専門学校もある』  どこかで挽回できるぞ。そう言って、わたしの背中を押してくれたのだ。 「良かったね。おめでとう。本当に良く頑張ったよな」  エライエライ! そう言って、わたしの頭をぐりぐりと撫で回す要くんは、既に鼻の頭や瞳の周りが真っ赤に染まっている。 「そうか。唯が選んだ道を、俺達はいつでも応援してるからな。頑張れよ」 「――うん。有難うおじさん……」  要くんのこと、言ってられない。わたしの視界もぼやけてきてるし……。おじさんの目も少し赤いかも。ああ、まだ早いよこのムード! そうだ、あの事を云わなくちゃ。 「えっと。今日はね、お二人を卒業式にご招待したくて来ました」 「はあああー?」 (これは、おじさんの反応) 「わあああー!」 (こっちは、要くんの反応) 「いい加減にしてくれ! 親でもないのに、行くわけねーだろ!」 「いついつ? 三月は仕事が忙しいから、都合つくかなー?」  あはは! 予想通りの二人の反応に、心の中で盛大に笑っちゃった。要くんがその気になってくれているなら、おじさんは絶対に『NO』とは言えない(・・・・)はず。 「三月一日。うちの学校は、曜日関係なく毎年この日に卒業式をするんだよ。今年は土曜に当たるから、絶対に来てね! 宜しくお願いします」  もう一度、心を込めて頭を下げた。
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