ソツギョウシキ、フタツ。

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 雲一つない青空はかなり高い所にあって、お日様が眩しいほどに降り注いでるけど寒いものは寒い。特に体育館の裏みたいに日の当たらないジメッとした場所は、寒さが骨身に染みる――。  約束したのに、まだ来ていない……でも、おじさんが約束を破るはずが無いから来るまで待とう。  ホームルームでは、数人が泣いていた。担任も、最後の挨拶しながらうるうるしてた。わたし? 勿論、泣けないし何の感慨も沸かなかった。有名大学に進学することを嬉しそうに報告し合うクラスの中で、黙って終わるのを待ってた(・・・・・・・・・)。今になって後悔したくなかったし、この結果は自分が招いたものだから、きちんと受け入れなければいけないのだ。  そういえば、さっき荷物を纏めてたら―― 『今日、クラスで打ち上げするけど……、鷹野さんも来る?』  控えめに、名前もうろ覚えの女子が訊いてきた。 『有難う。用事があるから行けない』  件の名前もうろ覚えな女子は、それを聞いてホッとした様子で仲間の集団に戻って報告してたっけ。ホッとすんなら、最初から誘わなきゃいいのに。最後だからって、偽善行為に走ったのかもね?  ――それにしても、ここ寒い! いったい何やってんのかなー? この前読んだ恋愛小説に、こういった告白(・・)は体育館の裏が定番みたいなことが書いてあったからここを選んだんだけど、そのあと読んだ漫画では、不良が気に入らない相手をシめる(・・・)場所も体育館裏が定番だったような……!? まあ、いいや。早く来てよ、じっとしてらんないくらい寒いし……。  バタバタバタバタ。 「ゴメン! 遅くなっちゃって。待ったでしょ?」  ハァハァと要くんが息を切らして走ってきた。「アチーッ!」だって。こんなに寒いのに。 「……うん、大丈夫。それより、どうしたの? そんなに慌てて。おじさんは?」 「いやー! 女子高生ってすごいねえ。航がカッコイイからいけないんだろうけど――」  眉をハの字にした要くんが、ちょっとだけ怒りながら「二人で歩いてたら、女子たちが集まってきて『一緒に写真撮って下さい!』って言うんだ。『俺たちは芸能人じゃないですから!』って、航が断っても食い下がってきて仕方なく応じたら、次々と! びっくりしたよ。そうしたら、航が『お前だけ先に行ってろ』って言うもんだから取り敢えず僕だけ先に来たんだ」ゴメンね、お待たせして。改めて謝ってくれたけど、別に怒ってないよ、大丈夫。 「そうか。じゃあ、おじさんはまだ時間がかかりそうかな?」 「どうだろう? 適当にあしらってくるんじゃないか? あいつイケメンだからなー。大変だ」  要くんも、おじさんと違う種類の超イケメンだよ! そうか、おじさん遅くなるのか。いい機会かも……勢いが大事だから、決行(・・)しようと思う。ヤバい、ドキドキしてきた。大きく息を吸い込んで。  「要くんに、聞いて欲しい話があります――」  よし! 聞いてね、要くん。
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