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『――有難う。僕の気持を知っていて話してくれたんだよね? なら、僕はお礼だけ言わせてもらうね。唯ちゃんの気持ち、凄く嬉しいよ。唯ちゃんは、航の姪だから僕にとっても姪って感じなんだけど、お父さんは僕と同級生だろ? だから僕にとっての唯ちゃんは、娘みたいな存在で、可愛いんだ』
初めて会ったのは、唯ちゃんが四つの時。凄く可愛らしくて、膝に乗ってきたときの重さ、抱きしめた時の温かさ、ジュースやお菓子をこぼして服を汚す仕草も愛おしかった。その時、既に僕と航は付き合ってた。このまま一生を共にするなら、僕等は決して子を授かることはないだろうけど、こんなに可愛らしい唯ちゃんがいるから問題ないなーって思ったんだ――
『これから言うことは、航にも話したことがないんだけど。その時、僕は心の中で誓ったんだよ。唯ちゃんのことは、お姉さんたちや航と共に守って行きたいって。唯ちゃんの人生に困ったことが起きたら一緒に解決したいし、嬉しいことがあったときには一緒に喜び合いたいって思ってる。唯ちゃんは、僕にとってそんな風に大切な存在なんだよ』
途中から、おじさんが少し離れたところで要くんの話を聞いてた。(多分、全て分かってて遅く来てくれたんだと思う。おじさんは、敏いから……)私は気付いてたけど、気付いていない振りをした。
けじめって、こういうことを指すのだろう。わたしは『要くんのことを、恋愛の意味で好きです』と端的に告白した。かなり驚いた顔をしたけど、要くんは時間をかけて丁寧に応じてくれた。そして、はっきりとフッてくれたのだ。
そう。わたしは今日、もうひとつの卒業を果たした。
「要くん、有難う。そして、これからも宜しくお願いします」
「僕からも、有難う。唯ちゃんが誘ってくれなかったら、自分たち以外の卒業式に保護者席で参列することなんかできなかったんだよ! 誘ってもらえて、嬉しかった。いい経験だったよ」
――卒業おめでとう。唯ちゃんの人生は、これから始まるんだ。焦らずのんびりと、自分のペースで歩めばいいと思う。困った時には、僕達の家に駆け込んでおいで! 新しい世界への旅立ちに、心からのエールを贈るよ。――
この夜、わたしは一人ベッドの中で枯れるほどに泣いた。多分、一生分の涙を流したんじゃないかっていうくらい――そして、スッキリした!
将来、要くんが嫉妬するくらいにラブラブな恋愛をして見せるんだから。
そう思えるようになれて、本当に良かった。
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