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ぬくもり
「うわ、びっくりした」
パッと明かりがついたリビングの中を見て、弟がそう言った。
「何してんの、こんな真っ暗い部屋で。しかも寒いし」
弟はきっと私に向かって声を掛けてくれているのだと思うが、私は答えることができない。
弟はそれを気にした様子もなく、一度荷物を置いて台所に向かった。水を注ぐ音がして、かちりとスイッチを押す音も聞こえた。
戻ってきて、今度はエアコンの電源を入れる。
「俺、部屋に荷物置いて着替えてくるから」
そう言うと荷物を持って、弟はリビングを出て行った。台所から小さく音がしている。きっと電気ケトルでお湯を沸かしているのだろう。
私はリビングに置かれたソファの真ん中で、膝を抱えて座っていた。帰ってきてすぐにこうして座り込んで、どのくらい時間が経ったのだろう。確か、帰ってきてすぐはまだ夕日で部屋が明るかった……ような気がする。
自分の膝を両手で抱き締めるようにして抱えたまま、私は何をするでもなく、ただぼんやりとしていた。俯いて足の先を見つめ、その先の床を見つめた。
弟がリビングに戻ってきた。
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