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「……おかえり」
「ただいま」
今更になって、ようやく弟にまともに話しかけることができた。
「ココアありがとう」
「うん。ちょっと顔色マシになったかな」
弟はそう言って、またテレビを見始めた。
私は今度はぼんやりとテレビの画面を眺めたが、やはり内容は頭に入ってこない。けれども、弟が楽しそうにしている、ということは分かった。
私は弟の服の裾に手を伸ばすと、ギュッと握りしめた。弟はそれに気が付いていたけど、好きなようにさせておいてくれた。
しばらくそうやって過ごしていたら、玄関の方からガチャン、と鍵の開く音がした。
「ただいま。二人とも帰ってる?」
「おかえりー。帰ってるよー」
弟が母の声にそう返事をしながら立ち上がる。その時、服の裾を私が掴んでいたのを思い出して、少し呆れたように笑った。
リビングに母と、続いて父も一緒に入ってきた。
「あれ、父さんも一緒?」
「ああ、ただいま。今、駐車場で一緒になったんだ」
「今日は皆でご飯食べられるわね」
両親が戻ってきて、リビングはまた少し賑やかになった。何となく、部屋が明るくなったような気もする。
「ちょっと姉さんお願い。今日、ちょっとダメみたい」
「そうなの?」
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