第2章 噂の先輩

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俺の手首を引いたのは、紛れもなくあの石川先輩だ。 「…ぇ?」と思わず問うと、 「ごめんね、君だと思わなくて」 口調がさっきと明らかにちゃう。 「その、ありがとうっ。別に返さなくても良かったんだけどね」 「ぁ、ソーデスカ。」 なんか信じられない。 というか言葉が片言になった。 「遠かったよね、こっちの棟」 俺の反応を見ながら、あのときみたいに優しく話しかけられた。 つか、ちょっと笑顔。 なんだ?気を遣われているのか? 「とおかった、っすね」 戸惑いながら俺も答える。 「石川くんが優しい…」 ふと、白石先輩が言った。 確かにな、そう思う。 「じゃ、僕送るよ!」 白石先輩の声はまるで聞いてないような感じで、提案された。 「いや、別にい「でも、せっかく持ってきてくれたし、廊下暗いから危ないよね」」 声をかぶせてきた。 暗かったけど、そこまでじゃ… 「えぇっと、笙太もいるから大丈「僕が一緒にいたいんだ、だ…めかな?」」 上目遣いで聞いてくる。 あ、ちょっと可愛いとか思った自分を殴りたい。相手はあの石川先輩だ。 あれ、でもさっき、「一緒にいたいんだ」って言った? 「まじか…」 今度は石川先輩をまじまじと見た。 「そんじゃあ、俺先行ってるな!」 と、笙太がそそくさと行きやがった。 「ぇ、まじかぁ!」 叫ばずにはいられんぞ?もう。
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