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「おはようございます。訪問販売で伺いました斉藤です」
元気な声で挨拶をするのは、ちょっと珍しいものを売る営業マン34歳である。
この斉藤が販売しているもの。夢を共有できる最新マシーンだ。
頭部にある装置をセットして、ネットにつなぎ、それを多数の人と共有できるという装置だ。まだ、特許をとったばかりの最新のテクノロジーを備えたものだ。
試作段階であるため、訪問販売という形でユーザーを集めている。
夢に興味のある人たちに実際に使用してもらい感想をいただいている。
色々な年代、土地の人たちに利用してもらうという目的もある。
販売というより、月々レンタルというかたちで5万円という、少々高額なものとなっている。
「今日、伺ったのはこの夢を不特定多数の人々と共有できるというまさに夢のマシーンです。お客さまは、こちらの装置を使い、夢の中で仮想現実を体験いただけます」
説明をうけているのは、60代とおぼしき男性である。きょとんとした顔ではなしをきいている。
「もうこの年になって、そういったわけのわからないものは、ちょっと……」
男性は、かなり不審げな表情で斉藤をみている。ドアをもうしめようとしている。
「いきなりで、怪しいとお思いでしょうが、本当にこちらはお客さまにご満足いただけるかと思います。夢の中では、ご自分の好きなように自分というものを設定できるのもまた、この商品の特徴でもあります。このような夢のあるマシーンを使わないのは、本当にもったいないと私は思います。自信をもっておすすめいたします」
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