鍛冶屋

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 ショーが終わると、プジョールは急いでテントにもどってがらくた箱をひっくり返し、今は使っていない古いマウスピースをみつけました。それを「鍛冶屋」のところへ持っていきました。大所帯のサーカスでは、馬車の車輪が壊れたり、馬の蹄鉄がすりへったり、テントがやぶれたり、いろいろなことが起こります。そうしたときに「鍛冶屋」が何でも修理してくれるのです。出し物の背景も作れば、お鍋の穴もふさぎます。そして楽団の楽器の手入れも「鍛冶屋」の大事な仕事でした。プジョールはその「鍛冶屋」に古いマウスピースを渡して何やらこっそりと細工を頼んだのでした。  もどってみると、テントの中はもう薄暗く、プジョールはランプに火を灯しました。くじらの脂の匂いが広がりました。そして五線紙を取り出すと、ペンにインクをつけて書きはじめました。
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