プジョール

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 即興の演奏が終わると、みんなはいっぱい拍手をしました。プジョールは帽子をとるとおおげさにふかぶかとおじぎをしました。そして帽子をもってみんなのところをまわって、大道芸人がするように小銭を集めるまねをしました。本当に小銭をいれるひとや、プジョールのほっぺたにキスをする女のひとがいて、みんなはひやかしたり、笑ったり、拍手をしたりしました。  そのうちプジョールがふらふらと酔っぱらった足どりでウーのほうに近づいてきて、なにかをいいました。ウーがなんのことかわからずきょとんとしていると、プジョールはウーの手をつかんで、ぐいぐいとひっぱっていきました。そしてみんなの真ん中まで連れてくると、プジョールはまた帽子をとってふかぶかとおじぎをしました。 みんなが拍手すると、プジョールはウーにもおじぎするように頭をおさえました。ウーはルネからならったパントマイムでおじぎは得意でしたから、プジョールよりもじょうずにおじぎをしてみせました。するとプジョールが自分のトロンボーンをもってきてウーに手渡しました。ウーがトロンボーンをもってきょとんとしていると、プジョールはさあ吹いてみろというかっこうをします。 ウーはとにかくくちびるにトロンボーンをあてがって、おもいっきり息を吹き込んでみました。プジョールやまわりのみんながどっと笑いました。なんにも音がでなかったからです。プジョールはみんなを制して、ウーにもう一度吹くようにうながしてみました。今度は前よりいっそうみんな笑いました。ウーが顔を真っ赤にして息を吹き込んでも、やっぱりなんにも音はでなかったからです。 じつは、トロンボーンやトランペットのようなラッパは、ただ息を吹き込んでも音はでません。くちびるをマウスピースにあて、息を吹きながらブーッと震わせることではじめて音が出るのです。くちびるを強く張ると音は高くなります。トロンボーンはその音を管の長さを伸ばしたり縮めたりして音程をとってきれいな音楽を奏でるのです。
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