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ああバレちった。腐った卵が割れちった。腐った黄身が飛び散った。どうにもこうにもならない。
俺が世界を目指したって、大したことねぇのは知ってるよ。けどさ?いいじゃん?ちょっとくらい調子乗らせてくれよ。マヂ腹立つ。やる気も失せるわ。
こんなことに時間割いてる暇があればよ。もうちょい勉強すりゃよかった。歯を磨けばよかった。捨て猫を拾えばよかった。世のため人のため死んだ母ちゃんのために働けばよかった。仕事を探せばよかった。住む場所を見つければよかった。セックスしてればよかった。どうせなら死ねばよかったかもな。それは母ちゃんが悲しむ。じゃあどうすりゃよかった?
″母ちゃん、「働きなさい」って言ってたよな?″
ごめ、ごめんな母ちゃん。俺のこと見抜いてくれて。俺が隠したリアルを暴いてくれて。親父も姉ちゃんも俺のこと見てなかったのに、母ちゃんは気づいてくれた。サイテーだよな俺。母ちゃん騙してまですることかよ。母ちゃん殺してまですることかよ。だって母ちゃん止めてくれてたじゃんかよ。
″母ちゃん、「自分で考えなさい。そして、決めたことは実行しなさい」って言ってたよな?″
嘘だよ。無理だよ。矛盾してんじゃん。母ちゃん、俺母ちゃんにとってどんな息子だった?高校中退しても仕送り送ってくれたよな。資格も知識も体力もないのに一生懸命に働いて俺を応援してくれたよな。俺を止めてくれたけど、応援してくれたのも母ちゃんじゃん。俺どうすりゃよかったの?俺を守ってくれてるんだよね?近くにいるんだよね。母ちゃんがいないと俺なんもできねぇや。皿洗いも洗濯もできないのにこれからどうすりゃいいんだよ。
″母ちゃん、「愛してる」って言ってなかったな″
俺のことなんて愛してなかったのかもな。でも、どちみちこんな俺を助けてくれた。養ってくれた。やっぱ母ちゃんすげぇや。俺母ちゃんみたいになれっかな?
″「ま、せいぜい頑張りなさい」″
母ちゃんから言われたんだっけ。もう遅いよ。もうやめたんだよ。もう戻れないんだよ。センスはなかったんだ。才能はなかったんだ。俺は無能だ。
…………やり直せないなら、いっそまたやり始めたほうが早いかもな。
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