朱色の双つ花

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 せーの、でお祈りしながら同時にフェンスを蹴る。心に刻んだ文字に、一画たりとも違いはない。示し合わせる間でもなく、通じ合った相手の為に。そして、自分の為に。叶うかどうかなんて、考える暇もないままに。  閉じられた瞳に浮かぶのは、自分ではなくて片割れの顔。そっくりで、まるで違って、恨めしくて、妬ましくて、誰よりも愛しくて、守りたくて、守られたくて、怖くて、おでこをくっつけあって泣いて、幾つもの夜を一緒に耐えた、お互いの顔。だから、身勝手にお願いした。 ──次は別々の場所で産まれて、きっとどこかで会えますように。    太陽を境に、二つの朱い花が咲く。美しく、ただ、美しく。
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