一.出会い

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一.出会い

一  水の中から見た太陽は綺麗。  宝石みたいにキラキラ光って、泳ぐ魚たちを照らす。  楽しそうに踊るみたいに金色の髪が揺蕩う。ほっそりとした白い足を左右に揺らしながら、拓水は空と同じ色の海の中を流れに沿うように泳いでいた。  ウミガメが拓水の真上を通り過ぎる。珍しい光景じゃないが、身体に感じる自然に、全身が包み込まれるような壮大さをまざまざと見せつけられる。魚たちの群れ、美しい珊瑚礁、そして一人の人魚。 「結構、伸びちゃったなぁ」  太陽に照らされる前髪を引っ張ると、肩につきそうなほどの長さがある。常に海の中にいるし、ゆらゆらと流れに乗って揺れる髪の長さなど、生きていく上で心に留めおくほどのものでもないが、あまりに伸び過ぎると鬱陶しい。  水の中で呟きながら、拓水はそろそろ家に帰ろうかと海の底に目を向けると、ボコッと激しく水が泡立って、周りの魚たちが一斉に逃げる。 「なに……っ?」  何事かとキョロキョロと目を走らせれば、人間の男が息を吐き出しながら海の底へと沈んでいくところだった。 「もしかして……意識がないの……っ? 助けなきゃっ!」     
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