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「ハァァッ!!」
「ヴェアアアアア!!」
拳と拳が衝突し、その余波は衝撃となって周囲に伝わっていく。
なるほど、これが魔物と意識すらも一体化させた真の力。
自分の感覚でも、拳一発の威力と速度は、前に比べて格段に上がっていることがわかる。
カルトの放つ拳の雨ですら、今の俺には止まっているようだ。
「......ッ!!」
「残念ダッタナ......」
残像を残すほど高速で動く奴の両腕を、俺はたやすく掴んでみせる。
ラッシュをたやすく止められたことで、カルトの顔には明らかな動揺が浮かんだ。そしてそれを表すように、カルトは掴まれた両の腕を引き離そうともがき始める。
「フッ!!」
「グボォッ!?」
ここで手を離すのはたやすい。けれど、今の俺は甘くない。両手が使えず無防備になったカルトの頭部に、俺は頭突きをお見舞いする。
出し絞るような声を出し、自分から距離を離すカルト。
俺の予想していた以上に、さっきの頭突きは強かったらしい。カルトは動きを止め、顔を片手で塞いでいた。
「ソロソロ、終ワリニスルトシヨウ。」
いまいち調整の効かないこの状態では、不必要にカルトの体を傷つけてしまうだろう。それは本意ではない。
だから、取り返しのつかないことになる前に、俺はカルトとの決着をつけることにした。
「フゥゥゥ...............ッ」
右手全体に、波動を集める。
それと同時に全神経を右腕に注ぎこんで、必要以上の波動を作り出さないようにする。
「グゥゥゥッ......ガァッ」
片手で顔を抑えるカルトも、空いているもう一方の手に黒靄を展開した。
今のカルトの意識は、残念ながら魔物の意識に乗っ取られてしまっているらしい。波動で内面を探ってみても、一向にカルト自身の思考を読み取ることができない。
ならばより早く、レイスとの決着をつけなければ。
「...............」
「...............」
「...............」
「...............」
「...............」
「...............」
時間にして、ほんの一、二秒の沈黙。
「ハァァァァア!!!!」
「ヴェェェェア!!!!」
互いに勢いよく飛び出し、能力を纏った片腕を構えて、一気に放つ。
放たれた青と黒の閃光。それらは空で交差し、天にクロスを作り出した。
拳は、どちらとも互いの頭を確実に捉えている。
先に相手に攻撃を当てたのは----
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