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「......さて」
俺は再び、自身の両腕に波動を具現させる。
「ゾンビを、少年の体から剥離させるッ。」
具現させた波動を流し込み、少年の魂に生命エネルギーを分け与えて活性化させ、ゾンビの魂を分離させる。分離させたゾンビの魂は、残念ながら完全に排除することはできない。だから波動を用いて、少年の魂の片隅に小さく封印を施す。これらを完了すれば、少年の黒い肌は本来の肌色に戻り、徐々に人間の姿へと戻っていくことだろう。
「......よし、これでいい。」
数分後、俺は少年の魂からゾンビの魂を分離させ、ゾンビの力を一時的に封じ込めることに成功した。少年の体色は、予想通り黒から肌色に完全に戻っている。これでしばらくは、無意識のゾンビへの変化はないはずだ。
少年の意識の回復にはまだ少しかかるため、俺は全身を人間の状態に戻して着ていた上着を脱いでそれを少年にかける。
「......はぁ。」
少年に異常は見当たらず、なんとか吸血鬼の討伐とゾンビへの対処は完了した。
......が、
「問題はこれから......だな。」
気がかりなのは、少年のこれからについてだった。いくら体内の魔物の力を封印したとはいえ、近いうちにまたゾンビ化する可能性は充分にある。その時、俺が少年を再び人間に戻してやれるという確証は、残念ながらない。
「......」
一番いいのは、本人が魔物の力を制御できるように肉体と精神の両面を鍛えることだろう。だが、それを耐えられるかどうかは本人次第だ。強制はできない。
「ッ......誰だ」
これからのことを悩んでいると、倉庫の入り口から何者かの気配が近づいてくる。それが新たな魔物である可能性を考え、俺はいつでも肉体を変換できるよう構えた。
「すいません、警察の者ですが」
しかし、その心配は無用だったようだ。
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