18人が本棚に入れています
本棚に追加
「......警察?」
「はい。こちらに女性が倒れているとの通報があり、駆けつけたのですが......」
なぜここに警察が......という疑問は、目の前の警官の話を聞きすぐに解決した。
どうやら少年は、吸血鬼の女が倒れていたのを見て警察に通報していたらしい。それは正しい判断だ。
......とは思うが、俺より先にこの警官が到着していたなら、今頃は吸血鬼によって倉庫内に警官の死体が散乱していたことだろう。警察より先に到着できたのは運が良かったと言わざるを得ない。
「見たところそのようなものは確認できませんが......」
「あぁ。俺も見ていない」
ここで死体が吸血鬼になって動きだしたと説明しても、この警官がそれを信じる可能性はゼロだ。それに、先の戦闘で女の死体は完全に朽ちて消えているため、俺は必然的に元からそんなものはなかったと証言するしかない。
「そうですか。いたずら電話だったのでしょうかね......?。ところで、一つお聞きしてもよろしいですか?」
「なんだ?」
「後ろの少年は一体?」
やはり聞いてきたな......と、小さくため息を吐く。
おそらく警官の目には、俺は気絶する少年のそばに佇む怪しい男に見えていることだろう。今いる場所が、人の寄り付かない夜の倉庫の中というのもこの疑いに拍車をかけている。
だが、残念ながら今の俺には無実を証明することはできない。事実気絶している原因は俺にあるのだから。
俺はとりあえず無言はまずいと、警官に対して説明の言葉を口から出そうとする。
だが一瞬、俺は目の前の警官から嫌なものを感じた。
「......」
「どうしました?」
警官は俺を疑いの目で見るが、俺もまた警官に疑いの目を向ける。
こいつは何か、とんでもないことを隠している、と。
「......ん......」
警官と俺との睨めっこの最中、背後から小さな声が聞こえた。
それは、少年が目を覚ました際に出した小さな声。しかし俺の予想していた時間よりも、かなり早い目覚めだった。
最初のコメントを投稿しよう!