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「......あれ」
覚醒直後でぼんやりとした視界に、先ほどまで髑髏になっていたはずの男が入る。
「(なんとか......なったな。)」
取り返しのつかない最悪の事態を回避できた。俺はその事実に一安心し、まだぼやけたままの目で倉庫の天井を見つめる。
「(眩しい......)」
しかし、天井に開いた穴から入ってくる光によって目が眩んでしまい、すぐに片手で目を覆い隠した。
そしてその時初めて、俺は自分の手が黒ではなく、本来の肌色に戻っていることに気がついた。
「(も、戻ってる......っ!よかったぁ!)」
「起きたか、少年。」
俺が久しぶりに見た自分の肌に喜びを感じつつ現状の把握をしていると、おそらく俺の肌を元に戻してくれたであろう髑髏男が、俺に話しかけてきた。
「はい。えっと、さっきはどうもーー」
「その話は後だ。それよりも」
男はそう言って背後に視線を向ける。俺もそれにつられて目を向けると、そこには警官が一人立っており、警官は軽く会釈をしてから話しを始めた。
「こんばんは。こんなところでどうしたんですか?」
「こんな......ところ?」
そこで俺は、ここが倉庫の中であることを思い出した。夜に俺がこんなところで倒れていれば、何かあったのではと疑われるのは当たり前だ。そして事情を知らない警官はきっと、隣にいる男のことを疑うだろう。この人は俺の恩人であり、何かあっては申し訳がたたない。
「あぁ......すいません。好奇心に駆られて倉庫に入ってみたはよかったんですが、途中貧血で倒れてしまいまして。それを中に入るところを見ていたこの人が見つけて介抱してくれていたんです。」
「倉庫に一人で......ですか。」
我ながら、苦しい言い訳だった。
実際視界に映る警官は、探るような視線を俺と男に向けている。しかしそれも数秒だけで、その後はすぐに顔を戻して言葉を続けた。
「そうですか。次からはちゃんと気をつけてくださいね?」
「はい......すいません。」
とりあえず、この人への疑いは晴れただろうか。
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