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その時、警官の少し後ろで何かが小さく光った。俺はそれがなんなのかどうしても気になり、小走りで光のもとへと駆け寄ると優しくそれを拾い上げた。
その光の正体は、死んだ女性が持っていた写真入りのペンダントだったのだ。
「どうかしましたか?」
警官は、不思議そうな表情でこちらを見る。俺はその気配にはっとし、警官から見られる前に素早くペンダントをポケットの中に突っ込む。
「あ、いえ。なんでもありません。では失礼します。」
「......?はい、お気をつけて」
俺は困惑を顔に浮かべる警官に再度一礼すると、急いで出口の扉へと向かい付近に立つ男の横を通り過ぎる。
その際微かに見えた男の瞳は、俺にはなぜか、警官を強く睨みつけているように見えた。
扉を通り倉庫を出ると、あたりはもうすっかり暗くなっていた。今が一年で最も昼の長い夏場であることを考えると、俺はかなりの時間倉庫の中にいたようだ。
「なんか、いろいろあったな......。」
倉庫を出た途端、俺の頭には中で起きた不思議な出来事の記憶が浮き出てきた。実際に自分が体験したことだというのに、まったく実感がわかないその記憶に困惑しながらも、俺は我が家へ向かって歩き始める。
「待ってくれ」
突然、背後から誰かの声がした。それは、俺と同じタイミングで倉庫を後にした男のものであった。
「えっと......なにか?」
「倉庫で起きたことについて、少し時間をもらえないだろうか。」
男は、俺に時間をくれと言ってきた。今日会ったばかりの男についていくのは少々気が引けたが、倉庫であった出来事から俺はこの男の人を信用している。それに、俺としてもさっき起きた出来事についていろいろと聞きたいことがある。
「......わかりました。」
少し悩んだが、それは自分にとっても有益になると判断し俺は申し出を承諾した。
しかし念のため、携帯の充電は確認しておくことにする。
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