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俺と男は、緋翠商店街の一角にあるベンチに腰を下ろす。偶然だろうか、俺たちが座ったベンチはちょうど、夕方俺がコーヒーを飲んだ時に座っていたのと同じものだった
「飲むか?」
「あ、ありがとうございます。」
男からコーヒー缶を手渡される。そのコーヒーも俺が飲んだものと同じだ。
「......ぷはぁ。」
夏とはいえ少し肌寒い夜中に飲むコーヒーは、前に飲んだ時のものよりも美味しく感じる。先程から妙に冷えた体に染み込んでいくこの温かさには、なんとも言えない安心感がある。
隣に座る男も俺と同じコーヒーを飲んでいる。口を離すと同時にため息が出ているところを見ると、俺と同じ安心感を感じているのだろう。二人でコーヒーの温かさを感じながらほんわかとしていると、男は静かに話し始めた。
「......まずは、いきなり呼びかけたことを謝ろう。すまなかった。」
「あ、いえ。大丈夫です。それで、倉庫で起きたことについてですけど......」
「それに関して、どうしても君に話しておきたいことがあったんだ。」
「話しておきたいこと......?」
男の表情はあまり変化しなかったものの、それでも真剣な雰囲気を感じさせる表情を顔に浮かべて話す。
「君があの倉庫で見たものについてだ。」
男の話しは、俺が知りたかった話と一致していた。
「......俺もそれを聞きたかったんです。なぜ死んでいるはずの死体が動いたのか、なぜ一度死んだはずの俺がこうしていきているのか、あの黒い肌はなんなのか......」
知りたいことが多すぎたのか、俺は意識しないうちにかなりの早口で言葉を並べていく。
しかし、男は俺の早口の質問を途中で止めさせて、まずはと話を切り出す
「順を追って話そう。その方が理解しやすいはずだ。......まずは、その質問すべてに共通する話。」
「......はい。」
「君は、魔物と言われて何を思い浮かべる」
「......?魔物って、あのゲームや漫画とかに出てくる魔物ですか?」
「そうだ。君は魔物と聞いて、何をイメージする」
「はぁ。......まぁ、定番の吸血鬼とかゾンビですかね。でも、それとこの話になんの関係が?」
「......信じられないとは思うが聞いてほしい。俺はその吸血鬼やゾンビが、さっきの動いた死体や君の黒い肌の正体だと考えている。」
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