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「......はぁぁぁ......」
また、深いため息が無意識のうちに口から出てしまう。
スカルのその一言は、一度乗っ取られた経験がある俺からすればそう簡単にできることじゃないのは嫌でも理解している。
でも、俺は人を襲いたくない。それがたとえ、ゾンビの仕業だったとしてもだ。
「そ、そうだ!私、イオくんのためにお弁当作ってきたんだ!。よかったら、お昼一緒に食べよ?」
そのことで頭を抱えていると、楓から昼食の誘いを受けた。しかも楓の手作り弁当というではないか、これは是非とも食べたい。
「おぉ、ありがとう」
「......なんか、あんまり嬉しくなさそう。」
しかし、声が怠さに引っ張られて暗くなってしまう。まさか声を出すのも億劫になってくるとは......
「......体が怠くてうまく反応できないだけだよ。楓のご飯楽しみだ。」
「そ、そう?えへへ」
『......』
教室内には、なんとも言えない雰囲気が漂う。俺が楓とあまり話さない理由は、彼女と少し会話しただけで出るこの教室内の空気だ。
さっきも言ったが、楓はかなりモテる。そのクラスの憧れの存在である楓が、俺みたいなあまり目立たないタイプの人間と親しげに話しているのが気に食わないのだろう。この空気が俺はどうしても苦手で、自然と楓に話しかけないという手段に走ってしまう。
だが楓は、俺に対して明らかな好意を向けてくれている。男としてそれを無下にすることなどできるはずもないが、それ以上に本音ではもっと楓と話したい。だから楓から話しかけられれば、こうして普通に会話をする。
楓との談笑を密かに楽しんでいると、教師が扉を開けて入ってきた。時間的にはそろそろ次の授業が始まる頃だ。
『授業始めるぞ。席につけ』
「休み時間って早いよね......。じゃあイオくん、また後でね?」
「あぁ、また後で。」
そういうと楓は自分の席に戻っていった。俺も教科書を引き出しから取り出して、授業を受ける姿勢を作った。
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