第2章 楓と腐

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◇ その頃、人がまったくいない小さな公園で、スカルは一人佇んでいた。 「......これで最後だな。......はぁ」 俺の足元には死体が五つ、緑の体液を流して倒れている。おそらくこいつらの正体は、長く尖った耳と動物の皮だと思われるものを体に巻いているという点からゴブリンだと予想される。 「やはり、日が経つにつれて魔物の数が増えてきている。それにパワーや知能も上がっているな。そろそろ、俺一人では厳しいか。」 緑の液体に濡れた自身の腕を見つめつつ、俺は日に日に増える魔物の発生数に頭を抱えていた。 俺が力を得た当初は、魔物は多くても一日に二体でれば多い方であった。しかし今では、半日経たずしてすでに二桁に届く量の魔物と戦闘を行っている。もしこの勢いのまま数が増え続けるのであれば、とても俺一人ではこれ以上の数は対処しきれない。 「本格的に探し始めた方がいいかもしれないな。」 俺は、かねてより考えていた一つの案について思案する。 その内容は、自身と同じく魔物の力を得た人間と協力体制を取るというものだ。これが実現できればさらに増えるであろう魔物に対処できる上、今までよりさらに強力な魔物の討伐も可能になる。 現に今地面に倒れ伏しているゴブリンも、過去に俺が倒した個体に比べてやや力が強くなっており、さらに待ち伏せや挟み撃ちといった簡単な戦術を取り入れていた。より強い魔物の出現を危惧しておくに越したことはないだろう。 「......いや」 だが、思いついてすぐに実行できるような簡単な話ではない。まず第一に、魔物に取り憑かれた人間というのは大体の場合、体を魔物に乗っ取られてしまう。そのためゾンビのような特殊な魔物を宿した者や、軍人のような肉体と精神の両方を鍛えた者にしか条件をクリアできるものがいないのだ。そして二つ目、その条件をクリアした者がこれを引き受けるかどうか。これが一番の課題点だ。国から寄付金やらが出ない完全なボランティアであるこの魔物の討伐を、命をかけてまで引き受ける正義感の溢れた人間が果たしてどれ程いるのだろうか。
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