18人が本棚に入れています
本棚に追加
「......」
手詰まりなこの状況の中、ゾンビという単語をイメージした俺の頭には、ある人物が浮かんだ。
そう、一週間前に出会ったゾンビの力を持つあの少年。少年はほんの僅かな時間だが、確かにゾンビの力を抑え込み言葉を話していた。もし仮にこの案を実行に移す場合、希望があるのは彼ぐらいなものだろう。無論強制はしないが、できることなら、力を貸してほしいものだ。
「......ん?」
その時、俺は魔物の放つ禍々しい波動を感じとった。
「いくか。」
とりあえず今後のことは後回しにして、今はその波動が放出されている場所に急いで向かう。
偶然か必然か、スカルの向かったその方角には、イオの在籍する学校がある。
◇
四時間目の授業が終わり、待ちに待った昼休みの時間がやってきた。
「くぁっ......ふぅ、終わった。」
四時間目で体が慣れたのか少し調子が戻ってきた俺は、黒板に書かれた内容をノートに写し終えると教科書と筆箱を一緒に引き出しに入れて教室を出る。
向かう先は屋上。扉の奥に広がる青空とそよ風を俺は密かに気に入っている。
「あぁ~涼しい~。」
夏休みが間近に迫るこの時期、学校の屋上にはそこそこ強い風が吹く。その風は教室の冷房よりも優しくて心地いいので、俺は昼休みになると決まって屋上にくる。
教室にはいつも他クラスの生徒が友人と弁当を食べるために集まってくるので、他人が座るための椅子空け兼人が多すぎて熱苦しいというのもあるが。
「んんっ......はぁ。さて、俺のいつもの場所はーっと。......よし、ちゃんとある」
屋上の一角にあるベンチ、そこが俺のいつも使っているポジションだ。
ベンチは他にも複数設置されているのだが、そのベンチだけは他から離れて置かれておりしかも出入り口からは一番離れているので使う人は少ない。まさに俺の特等席。
「よっこいしょっと。はふぅ......」
そのベンチを独占するように俺は上に横たわり、汗を乾かす心地よい風を感じながらせまる眠気には逆らうことなく身を委ねた。
最初のコメントを投稿しよう!