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「......あ、しまった。このペンダントも警察に押収されるなら、指紋とか取られて俺も容疑者になってしまうんじゃ......。......いや、どのみち第一発見者ってことで疑われることに変わりなかったな。」
冷静になった俺は、ペンダントを眺めながらそう言葉を漏らす。
その時、光を反射するほどに磨かれたペンダントに、俺ではない別のなにかが映った。
「ッ!?」
俺はとっさにペンダントを手から離し、その場から距離をとる。そこで振り向いた俺の目に映ったものは
「ギシャァァァア!!」
人狼によって致命傷を負い、床に倒れていたはずの女性。しかもその姿は、元の人の姿ではなくなっていた。
「ギシャァァア!」
「くっ!?」
背後から迫る女性から、ひたすら倉庫の中を逃げ回る。無我夢中で走り回り、もはや出口がどこにあるのかもわからないほどに、自分の脳はパニックを起こしていた。
突如動きだした女の死体。言葉を一切話さず、ひたすらに俺を追いかけてくる。死体特有の青白い顔をよく見ると口からは牙のようなものが出ており、まるで、物語に出てくる吸血鬼やゾンビのようなその姿は、俺に強い恐怖を与えていた。
「(落ち着け、落ち着け。)」
脳を落ち着かせるため、自分自身に自己暗示をかける。だが、数分前の自分と同じようにとはいかなかった。後ろから追われることへの恐怖と、出口の見えない焦りが、さらに俺を追い詰めた。
「はぁっ......はぁっ......」
鉄骨や鉄パイプの塊が無造作に置かれた倉庫の中は、迷路のように入り組んだ道を形成している。俺はパニックを起こしながらも、なるべく直線を走らないように曲がっては走り曲がっては走りを連続して行った。
「はぁっ......はぁっ......」
「ガァァァア!」
「くっ、速い!」
死体の女との命がけの鬼ごっこをしながら、俺は奴について二つ気づいたことがある。
一つは、異常なほどに足が速いこと。もし直線を走っていたのなら、一瞬で追いつかれて俺は終わっていたと感じるほどに速い。
二つ目は、痛みをまったく感じていないこと。途中、奴は道を曲がりきれず鉄パイプの山に突っ込んだことがあった。普通の人間ならそれだけで大怪我になるほどの勢いなはずなのに、奴はそれを気にすることなくこちらに向かってきた。それどころか、走るスピードはさらに上がったような気がする。
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