第3章 機と腐

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「(それは問題じゃない。むしろ問題なのは......)」 魔物の状態を見た警察は、これを誰がやったのかと疑問に思うはずだ。そうすれば、国家権力として全国に繋がる警察の手によって、そう時間はかからず俺とスカルは見つかるだろう。そうなれば最悪、魔物を宿した人間として捕縛の対象になるかもしれないのだ。 しかし、ここで俺が一人突っ込んだところでどうこうなる問題ではない。相手の人数もそうだが、俺はそれ以前に魔物の力を扱いきれていないためだ。ならこういう時、俺が取るべき行動は一つ。 「(スカルに知らせないとッ!)」 情報を伝えること。 そう考えた俺は再び走り出した。止まる以前よりもさらに足に力を込めて。 全速力で走ること数十分。俺は緋翠山の麓に到着し、すぐに山の中へと入っていた。 地図に書かれた区画は俺の入った位置からさほど離れておらず、立派に生えた木々を避けながら走っていると、すぐに立ち入り禁止の看板を発見した。しかし今はそれに構っている余裕はなく、俺は見て見ぬ振りで看板横を素通りする。 「ッ!」 看板横を抜けた先には、山の中にしては妙に開けた空間が広がっていた。地面の傾斜もなだらかで、その光景はとても封鎖されるような場所のものではない。そしてその広い空間の中に、スカルはいた。 「来たか、イオ。」 スカルからも俺の姿を確認したらしく、俺はすぐに走りだしてスカルに近づいていく。 「早かったな。予想ではもう少し遅くなると思っていたんだが。......なにかあったらしいな。どうしたんだ?」 スカルは走りながら近づいてくる俺を見て、何かがあったのだとすぐに察したようだ。 スカルの側に近づいた俺は、廃工場に警察の物だと思われる車両が来ていたことを伝え、警察が魔物を調べているかもしれないとスカルに説明した。その時の俺の心情は焦り一色だったが、スカルはその逆。至って冷静に俺の話を聞いている。
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