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第5章 髑と狼
「......ん......ぁぁ......」
小鳥のさえずりを目覚ましに、俺は閉じていた目を開く。朝早くに起きれるか少し心配だったが、なんとか無事に起きれたようだ。
「............」
隣を見ると、そこには眠っているカルトさんの姿があった。寝息一つ発さず、静かに寝ている。
念のため、片手をカルトさんの口元にかざして呼吸を確認すると、ちゃんと呼吸はしていた。
「よかった。......さて、」
俺は、ひとまずの不安要素を片付けて自身の分の寝袋を畳むと、スカルが置いていった器具の中から朝食作りに使えそうなものを探す。
食材は確か、昨日の残りがまだ箱にあったはずだ。
「うーん......ん?......っ!」
その時、綺麗にしまわれた器具類の中に、見覚えのある道具が見えた。
「これ、あの時の奴だ。」
そこにあったのは、とても小さなコンパクトサイズの焚き火台だった。その側には焚き火台の大きさにあった金網とキャンプ用のケトル、チタン製のマグカップもある。
そう。これらは俺がスカルに特訓をつけてもらう前に、スカルに作ってもらった甘いコーヒーセットだ。
「......懐かしいなぁ。」
俺がこれでコーヒーを飲んでから、もう二ヶ月以上が経過している。
あの頃に比べて、俺はどれくらい強くなれたであろうか。まだまだスカル程ではないにしろ、楓を守れるくらいの力はつけられただろうか。
「......」
カルトさんは、椛さんという大切な人を亡くした。
それは俺がもっとも嫌い、避けようとしているものと同じ。
だから俺には、今のカルトさんがどれ程に傷つき、心の底から悲しんでいるのか。それがたとえ全部ではなくても、その一端くらいは理解できる。
「......よし。」
スカルは言っていた。心の疲れには甘いものがいいと。
なら、俺もスカルに倣って、カルトさんのためにとびきり甘いコーヒーを作ろうではないか。
「スカル、少し借りますね。」
本人はここにはいないが、俺は一言断りを入れてから、コーヒー作りを始じめた。それから間も無く、周囲にはコーヒーの香りが漂い始める。
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