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第2章 楓と腐
あの摩訶不思議な事件から一週間が経った。
あれから、少し体が怠く感じることと、携帯や財布などが新品になった以外には特に変わったことのない平和な日常を過ごしていた。
「......」
今は三時間目が終わった後の休み時間。自分の席は窓側なので、休み時間はいつも窓から見える雲の数や形を眺めている。友達?まぁ......一人だけいる。でも学校じゃ話しにくいんだ。
「イオくん。」
「......」
噂をすれば......
「大丈夫?意識がどこか行ってるよ?」
「......あぁ......おはよう。」
「......本当に大丈夫?ここ最近ずっとそんな調子だよ?」
この人は橘 楓。俺の幼馴染のわりとモテる女子。母性を感じさせる優しい系の人で、なにかと俺に気を使ってくれている。ちなみに、俺に話しかけてくれるのも教師を除けば楓だけだ。
まだ体は重いが、だらしない格好のまま話すのも楓に悪いと思い、俺は態勢を整える。
「ごめん......最近怠さが抜けなくて......」
「気分でも悪いの?ちゃんとご飯食べてる?」
「ん?ご飯?」
「うん。ご飯」
「ご飯......ご飯......。そういえば、最後に何か食べたのいつだったっけ」
「......それは重症だよ?」
冗談なんかではなく、本当に最後に何かを食べた日が思い出せない。昨日......いや、一昨日......その前......
「......多分、一週間前のお菓子が最後......かも......」
「原因それだよね?だめだよ!ちゃんとご飯食べないと!」
「そんなこと言われても......」
あの倉庫での一件以来、俺は空腹という感覚を感じなくなった。原因は十中八九ゾンビが関係していそうだが、もう考えるのはやめた。頭が痛くなる。
この一週間、俺はなんやかんやで魔物について考えては頭痛を起こし、そして倒れるように寝るを繰り返していた。なんとか忘れようと努力はしてるんだが、どうしても気になって仕方がない。
「......」
特に、今一番俺の頭を悩ませているのは
『もし魔物に意識を乗っ取られそうになったなら、その時は人のいる場所から少しでも離れることだ。』
スカルに言われたこの一言だった。
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