第3章 機と腐

1/57
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/267ページ

第3章 機と腐

翌朝、俺はスカルからもらった地図を頼りに目的の場所へと向かっていた。 学校の方は、やはり死者が出てしまったことが問題になり簡単に再開とはいかなかったらしく、ちょうど夏休みが近かったこともあり俺は約二ヶ月間の夏休み期間に突入した。 ちなみに今持っている手荷物には着替え一式と倉庫で拾ったペンダント、それから念のための薬一式だけで、携帯などの娯楽品は一切入っていない。 「遠いな......」 緋翠山は、俺の住む家から少し離れた場所に存在している。通常の俺の歩行速度だと一時間近くかかる距離だ。 セミの鳴き声や暑さは特に気にならないが、どうせ行くのならなるべく早く着きたい。 「......よし。」 だから俺は、目的地までは走って行くことにした。昨日までは毎日感じていた体の怠さも今はまったくない。久しぶりに、俺の体は完全な状態になっていた。 「......」 目的地についてからのことなど考えもせず、俺はひたすら緋翠山を目指して走る。普段はインドア派な俺だが、たまには日光を浴びて運動するのも悪くない。 道を曲がり、走り、また道を曲がる。この辺の地形はすべて頭に入っているので、緋翠山までの道のりは特に迷うことはない。流石に山の中までは把握していないが。 「あれ?」 ここまでノンストップで走っていたが偶然通った道からある場所が目につき、俺は足の動きを止めた。 そこは昨日、俺とスカルがいたあの工場だ。 「なんだ......?」 工場の敷地内には多数の車両が停めてあった。それも今まで見たことのないような特殊な車両が。黒と白の色合いからすると、おそらく警察のものだとは思うのだが。 「(警察......ッ!?まさかッ!!)」 俺はその時、昨日学校で受けた取り調べのことを思い出した。あのスーツの男......というより警察は、魔物のことを詳しく知りたがっていた。もし仮にあの停まっている車両が警察のものだとすると、昨日スカルが倒した魔物の残骸を回収しに来ているとしか思えない。俺の記憶では確か、頭だけ消し飛んだ魔物が一体、スケルトンが一体、そしてゾンビが一体の計三体の死体があったはずだ。魔物を調査するための素材としては十分な価値がある。
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!