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気づくと少女の絵の線は、血で描いたようなべっとりしたものに変わり、その色は狂ったように青い。
視点はだんだんと少女の顔に近づいていく。
絶望に歪み、大きく口を開け歯を剥き出して涙を流すその少女の顔はおぞましく、気づけば僕も声をもらし、泣いていた。
少女は手から絵本を落とした。すると本がパラパラと開き、絵本の中から笑い声がする。天使たちは笑顔で絵本の中で空を飛び、踊り回る。声は、だんだんと高く、けたたましくなる。
ページは最後までめくられた。最後のページに、少女の名前が、彼女を象るのと同様の線で乱暴に記された。
今度はページが表紙の方へと戻っていく。気づくと絵本の天使は悪魔の姿で笑い、部屋には、閉じられた絵本だけが残った。
終わり
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