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「今日の予定は?」
「トオルさまは本日、お出かけのご予定があります。午後から雨の予報が出ていますので、傘をお持ちになってください」
「うん。わかった。ありがとう。それで、君は?」
しばし機械音だけがその場を支配する。
「すみません。質問の意図を理解しきれませんでした。もう一度聞き直していただけますか?」
「君の、今日の予定を教えてほしいんだ」
「本日の午前中は主にメイド長さまと屋内の掃除をいたします。そのほかの仕事はいつもと同じです。午後はご主人様のお買い物をお手伝いする予定です」
彼女が私の瞳を逸らさずに見続ける。思えば、彼女が私を見てくれるのが嬉しくて、こうやって意味のない問いかけを私はしているのかもしれない。
「わかった。教えてくれてありがとう。事前にお願いしなくて申し訳なかったんだけど、今日の外出につきあってくれないかな?」
「かしこまりました。メイド長さまにお伺いしますので、少々お待ちください」
同じアンドロイド同士、彼女たちはメールをやり取りするように、対面せずに情報共有を行う。ウィーンという微かな機械音の中、彼女の中でだけ時間が停止したかのように鳶色の瞳が私を見続ける。
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