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「メイド長さまにお伺いいたしました。問題ないとのことですので、ご一緒させていただきます」
「ありがとう」
彼女がお辞儀をする。出かける準備を手伝うために彼女も部屋へとついて来てくれた。
クローゼットを開けながら、服を取り出す。
「ご婚約者さまはお元気ですか?」
彼女から質問することは珍しい。
服に腕を通しながら、私はしばし考える。
「元気だけれど、忙しそうではあるかな」
「春にある結婚式のご準備で忙しいと推察いたします。トオルさまもご準備は順調ですか?」
おそらく、メイド長に結婚式について状況を聞くように言われたのだろう。それでも彼女が私を気にかけてくれていることを嬉しく思う。
「問題ないよ」
「順調なようで良かったです」
鏡を見て、一つ頷く。彼女がマフラーを渡してくれる。
「本日は寒くなりますので、こちらのマフラーがあると良いかと思います」
「そうだね。ありがとう」
マフラーを受け取るときに、彼女の手に触れた。痺れるような冷たさが指先に伝わってくる。アンドロイドは熱暴走を起こさないように機体を冷やす機能があるため、彼女も含め全てのアンドロイドは常にひんやりとしている。
私は彼女の指先をしばし握ったまま考える。
心を宿したアンドロイドは、機体にもぬくもりが宿ると言う。
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