オリオンの指先にぬくもりを

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オリオンの指先にぬくもりを

 彼女のまつげが滑らかに持ち上がる。そのまぶたの下から鳶色の瞳が覗き、しぼりとなる焦点が何度か収縮すると、瞳に光が宿った。首をわずかに持ち上げ、台座からゆっくりと立ち上がる。曲がった関節は春に芽吹く若葉のように伸び上がり、下を向いていた顔がひまわりのように上を向く。  私は彼女の起きる姿が好きだった。  人間よりも白く、まるで凹凸のない滑らかな肌。グレーとベージュの合わさった淡い黒髪。薔薇のように赤い唇に、彼女固有の特徴として、口元に3つのホクロがあった。オリオン座の中央に並ぶ三つ星のように、均等に並ぶそのホクロにちなんで、父は彼女にオリオンと名付けた。 「トオルさま。おはようございます」  彼女の瞳の光が私を捉える。頭の中では画像照合が行われたのだろう。ウィーンというかすかな機械音の後に彼女は私にそう言いながら頭を下げた。 「その呼び方はやめてほしいと言ったじゃないか」  冗談めかしたように笑いかけると、彼女はゆっくりと首をかしげて微笑んだ。 「別の呼び名を教えていただかないと、パーソナル・メモリを更新できません」 「君に新しい呼び名をつけてほしいと言ったよ」     
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