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炬燵的なカノジョ
「ねぇ、ナオ。もし人類が炬燵の中にずっと入っていれば、世界平和も夢ではないんじゃないかしら?」
僕の隣に座る少女、木葉は蜜柑の皮を丁寧に向きながらそう呟いた。
どこかのキャラクターを全身パーカーにあしらった子供らしいパジャマ姿の木葉。
ようやくテレビは元旦の特番が終わって、ニュースキャスターが読む原稿の話題も、新春で賑わう神社の人々の様子から、今後の日本経済の情勢といった真面目なものへと変化していた時期のことだ。
ちなみに、ここは僕の家だ。木葉がまるで自分の家のように寛いでいることに違和感がなくなってしまったのは、おそらく僕も感覚も相当麻痺してきている証拠だろう。
「なんだって?」
それでも、文句のひとつも言わずに彼女の質問を汲み取ろうとする僕は偉いと思う。
「この異常気象とも呼ばれる地球で、私たち人類が快適に暮らせるために必要最低限の敷地で生活できる場所を提供してくれているのよ? 素晴らしいと思わない? 開発者がノーベル平和賞を受賞して大絶賛されてもおかしくないわ」
コツン、と炬燵の中で木葉と僕の足が接触事故を起こす。
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