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「ねぇ、今日放課後空いてる?」
「うん!どっか行く?」
「いいね!それなら駅前のカフェ行こうよ!限定のかき氷おいしいんだって!」
「え~超楽しみ!!」
ありふれた会話。
まさに女子高生。
私は、そんな光景を映像として見ている。
だって、私には関係ないから。
放課後は特にすることも無くて、退屈だ。
この学校に入るために入っていた塾も辞めた。
たぶん裕福であろう家の事情からかバイトは禁止。
「つまらない。」
たまに、心の声が外に漏れ出てしまう。
ふと、窓の外に目をやる。
次が体育のクラスの生徒達。
その中で、とある人を自然に目で追っている。
そう、一つだけ、たった一つだけの娯楽。
私の心の中だけの、楽園。
彼を見ていることだけが、今この学校に居る意味なのかもしれない。
音程のずれたチャイムが鳴り、授業が始まる。
先生の話をほどほどに聞きつつ、窓際の席の特権を堪能する。
母親の趣味で伸ばし始めて、背中の真ん中まである髪の毛が、
丁度先生からの視線逸らしに機能している。
彼は、いつも笑顔だ。
グラウンドを走った後も、辛いはずなのに眩しいくらい。
違う世界の人だ。
だからこそ、惹かれているのかも。
こんな想いを彼に抱いている子は星の数ほどいて、
私はその中でも底辺の存在だろう。
だから、近づきたいとかは思わないし、思えない。
この席から見られる光景が、
私の心の中だけの、楽園なのだ。
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