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得意の転移魔法での貨物輸送について研究していた博士は、ある日、学生の使う消失魔法との共通点に気が付いた。
荷物と本、魔法陣間と個人呪文とはいえ、どちらも物を移送できている。
では、生物を消して、また顕したらどうなるのか。
鉄道も無い当時、それが出来れば移動手段の飛躍的発展だ。
試した人間は居たのだろうけれど、実験という形で実施したのは、彼が最初だった。
初めに試したのは、鉢植えの花。これはちゃんと戻った。彼の仮説と大方の予想通り、一週間後、満開の花びら一枚落とすこと無く花は手元に戻った。
次に試したのは、魚、鼠、そして鳥。どれも変化は無く、成功だった。
「そこで彼は気付いたんだ。それとも最初からそのつもりだったのかもしれないけれどね。消したまま変わらないのなら、それを利用して未来に行く事が出来るのではないか、と」
そして彼が一足飛びに試したのは、人間。
助手は嫌そうな顔をした。
「……それ、志願する奴居たんですか」
「もちろん助手も学生の誰もが嫌がっただろうね。けれど彼は迷わず対象を自分にした。何より未来が見たかったのは自分だったからだと思うよ」
教授は続ける。
「まずは研究室で消失魔法が一番上手い子に、大きな物も消せるように訓練をさせたんだ」
学生が便利に使っているものは、得意な者でもせいぜい鞄くらいまでしか消せない。訓練はそうとう大変だったと思われる。
そしてある日、博士は長期休暇を申請し、そのまま居なくなった。
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