1 突然の別れ

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日曜の晩。 実家の母から電話がかかってきた。 「アンタ、蓮くんと別れたの?」 なんで、お母さんがそんなこと知ってるんだろう。 まだ、由香と武士さんしか知らないはずなのに。 母は私の動揺などお構いなしに続けた。 「今日、蓮くんとご両親がやってきて、婚約を破棄したいって。アンタにはもう話し済みだって聞いたけど」 「うん。金曜日に別れ話された」 「婚約破棄まで言われると、ただの喧嘩じゃないみたいね。何か、心当たりあるの?」 「私が、仕切りすぎたんだと思う。 あと……」 言い淀んだ私の言葉を、母はずっと待っている。 「会社の先輩が、蓮が別の女の子と一緒にいるところを見たって。 でも、私には信じられない」 「まあ、理由は蓮くんにしかわからないかもね。でも、ご両親連れての婚約破棄の申し込みだったから、私もお父さんも受け入れたけど、良かったのね?」 「うん。たぶんもう、蓮は戻ってこないから」 「それなら、早く式場キャンセルして、親戚にも伝えなきゃ」 「そのことなんだけど、少し待ってほしいの」 「待つって……」 「指導係だった水野先輩に、プロポーズされてて」 流石に母も呆気にとられたようだった。 「いつ、プロポーズされたの?」 「金曜日。蓮と別れた直後に」 「受けるつもりなの?」 「そのつもりで、いる。蓮のことは忘れられないけど」 「その先輩は、それでいいって言ってくれてるの?」 「明日、話し合ってみようと思ってる」 「そう……正式に決まったら、また挨拶に来てちょうだい」 母はそれだけ言って電話を切った。 考えなきゃいけないことは山積みだ。 武士さんのこと、これからのこと。 武士さんがほんとに私のことを好きでいてくれているのは、今日由香と話してはっきりした。 あとは、自分の気持ち次第だ。
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