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月曜日。
朝出勤すると、もう武士さんは来ていた。
朝礼前に、部長に時間をもらう。
「二人して真面目な顔してどうした?
なにか、部署内で問題でもあったか?」
「いえ、プライベートなことで」
ここは武士さんに任せたほうがいいだろう、と私は静観することにした。
「実は、大島さんと付き合うことになりました」
「は?いやだって、大島さんは、長年付き合ってた彼と結婚するんだろ?」
「事情があって、婚約破棄されました」
私が言うと、部長はちょっと複雑な顔をした。
同情と、困惑と、それを隠すような顔。
「僕はずっと大島さんのことが好きだったので、このチャンスを逃す手はないと思って告白して、昨日正式にOKをもらいました。
プロポーズは、断られましたが」
「挙式は、どうするんだ?」
「キャンセルするつもりです。
スピーチもお願いしていたのに、申し訳ありません」
部長に頭を下げる。
「念の為聞くけど、君たち二人が結婚する可能性はあるの?」
武士さんがチラリ、と私を見る。
「今すぐは無理でも、いずれはそうしたいとおもっています」
「分かった。また進展があったら知らせてくれ」
部長は話を切り上げて、部屋を出ていった。
私達もその後を追う。
朝礼の時間まで、あと少ししか残っていなかったからだ。
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