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私達が付き合いだしたというニュースは、由香と武士さんと部長しか知らないはずなのに、その日のうちに社内に広まっていた。
由香じゃないのは確かだ。
部長、口が軽いです。
同じ部署の人は、蓮と付き合ってたことを知ってるから複雑な顔をしていたけど、そうじゃない人からは純粋に「おめでとう」と言われて、何となく複雑な気分だった。
仕事終わり、武士さんが、私を掴まえて言った。
「綾ちゃんのご両親に挨拶に行きたいから、今週末空いてるか聞いておいて」
「……挨拶?」
「結婚が無理でも、同棲はしない?その了承をもらいに行きたいんだけど」
同棲くらいなら。
魔が差したというか、勢いに飲まれたというか、私は頷いていた。
仕事もそうだけど、武士さんは行動が早い。
仕事が終わって家に帰ると、私は実家に電話をした。
「昨日の話なんだけど……」
「もう、話し合ったの?」
「昨日、お母さんとの電話のあとにすぐ電話があって、私が蓮に未練を残したままでも構わないって言ってくれたけど、やっぱり失礼だから、結婚は断った。
蓮に連絡して、二人で式のキャンセル費用払うつもり。親戚には……外聞が悪くてごめん」
「そう。アンタがいいならそれでいいけど」
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