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「それで、急なんだけど、同棲だけでもしたいからその了承をほしいって、今週末にうちに挨拶に行きたいって言ってるんだけど、空いてる?」
「空いてるわよ。そうね、土曜の11時でどう?一緒にお昼でも食べましょ」
「わかった。あの……お父さんはなんて言ってる?」
「婚約破棄についてはショックを受けてたけど、アンタが自分で決めたことに、反対するつもりはないって」
ホッ、と肩の力が抜けた。
反対されたらどうしようかと思っていたのだ。
でもふと考える。
うちはともかく、武士さんのご両親は賛成してくれるだろうか。
私が婚約破棄されたこと、しってるんだろうか。
結婚は断ったのに同棲だけしたいなんて。
不安にかられながら、武士さんに電話をかける。
「土曜の11時ね。オッケー。ご両親の好きな食べ物とかある?」
「お菓子とかなら、駅前のケーキ屋さんにあるケーキですね」
「じゃあ、行く途中で買っていこう。
綾ちゃんは、来週末予定ある?」
「いえ、ないです」
「じゃあ、うちの親にあってくれないかな」
「はい、あの……私のことはどこまで…」
「婚約破棄については話してないし、話すつもりもないよ。話す必要がないからね。同棲については、俺の独占欲をうちの家族はよく知ってるから大丈夫」
こんなに優しい人なのに、プロポーズを受け入れることが申し訳なくて、涙が出そうになった。
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