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私は、蓮にLINEを送った。
『やっぱり式場、キャンセルしていいよ』
ブロックされていたら、一人で払うつもりだった。
でも、すぐに蓮から返信が来た。
『わかった。キャンセル費用は全額俺が払うから』
『二人でお金出しあったことだし、キャンセル費用も半分ずつにしたい』
『わかった。綾の口座に振り込むから、キャンセル料の詳細が決まったら教えて』
やりとりは、それだけ。
なんだかひどく事務的で、私はまた泣きそうになった。
「昨日も残業で疲れてるでしょう?家に帰って休んだほうがいいんじゃない?」
武士さんは、休みのたびに私をどこかしらへ連れて行ってくれる。
でも、武士さんが忙しいことは部下の私にもわかる。
ちなみに私はと言えば、ようやく武士さんに対して敬語を使わないで話せるようになった。
元指導係の武士さんに対して、敬語をやめるのはなかなか至難の業だった。
「じゃあ、うちくる?」
「武士さんの、家?」
「そう。まだ一度も来たことないでしょ?」
「い、行く!」
中学生並にプラトニックな二人。
なかなか私達の関係は進展していない。
もっと武士さんを好きになりたくて、私はちょっと焦っていた。
なんだか、せめて好きという気持ちくらいは大きく育てなきゃいけないようなプレッシャーに押しつぶされそうで。
家に行けば、武士さんのテリトリーに入れば、何か変わるかもしれない。
私は武士さんの運転する車で、そのまま武士さんの家にお邪魔することになった。
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