6 願い

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蓮の体調が落ち着くと、また放射線治療が始まった。 人によっては吐き気なんかの副作用があるらしいけど、蓮はダルさのみで、そんなに吐き気もなかったから、食事も普通に取れた。 でも、やっぱり食欲はわかないみたいで、全部を食べきることは殆どなかった。 私はいつもお見舞いに行くときは何かしらおかずを作って持っていって、蓮はそれだけは残さず食べてくれた。 その甲斐あってか、蓮にも少しずつ体力が戻ってきた。 放射線治療を始めて半年後には、退院の許可がおりた。 後は、週に5日通院して放射線治療を続けるらしい。 お母さんも最初は身の回りのことをするために残っていたけど、いつまでもお父さんを一人にはしておけないから、と、蓮のことを私に托して帰っていった。 久しぶりに入る蓮の部屋は、びっくりするくらいものがなくなっていた。 「もうここには帰ってこれないと思ってたから、ほとんど処分したんだ」 家財は残っていたけど、服が殆どない。 「通院するためにも、また服を買い揃えないとね」 「だな。でも、まだ買い物に行くのは辛いから、ネットで買うしかないな」 蓮がしまっておいた日用品なんかは、私が箱から出してまた使える状態にした。 いつ何が起こるかわからないから、私は蓮の家で寝泊まりしている。 「またこうして綾と暮らせるなんて、思ってもいなかった」 蓮が嬉しそうに言う。 「生きようとする意志は何より強いのよ」 「それ、マンガのセリフじゃん」 二人でクスクス笑った。 私も、またこうして蓮の家で、蓮とこうして笑い合える日がくるなんて思ってなかった。 蓮が生きる決意をしてくれて、本当に良かった。 武士さんが、私を蓮の元へ行かせてくれて、本当に良かった。 そして、お腹にいたあの子。 蓮を連れ戻させてくれてありがとう。 あなたのことは、一生忘れないから。 蓮が退院して1年がたった。 1ヶ月に一度通院して再発がないか確認しているけれど、今のところ再発の気配はない。 調べたところによると、胃がんの五年後生存率はかなり低い。 それでも、その低い可能性に、私たちは賭けている。
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