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――これは……俺か。
ワンワンのおしながき、とある。
書かれたメニューが健人の作ったものと同じだった。
どうしてこんな落書きをしたのだろう。鷺沢はそんなことをする男には思えない。他の誰かが描いたのかと思ったが、それだとこのゴミ箱にある理由が分からない。首をひねりながら考える。よく分からないが、気がつくと自分の頬が緩んでいた。
料理をしている犬の後ろ姿はとても幸せそうだった。フライパンとしっぽが派手に揺れている。鼻歌を歌っているのだろうか。周囲に音符のマークが幾つも飛んでいた。
――なんか、可愛いな。
どの絵にも鷺沢らしい毒とセンスを感じた。
そして、鷺沢の温かい愛情を感じた。
気になった健人はその落書きの山をこっそり自分の部屋へと移動させた。
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