【9】ヒートの行方

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 ああ、もう駄目だ。  ――舐めたい。  立ち上がったしこりを舐めて、その硬さを舌で味わいたいと思った。  健人のペニスも反応している。アルファ特有の瘤の部分まで硬くなっているのが分かった。  鷺沢を抱きたい。抱いてしまいたい。番って自分のものにしたい。抗いがたい欲望が腹の底から湧いてくる。それでも健人は自制心を失っていなかった。 「……したい……ワンコのおまえと今すぐしたい。欲しい」 「俺はあなたとしたくない」  健人は叫んだ。 「あなたとは発情ではなく、感情でセックスしたい」 「…………」 「このまま、発情のままにセックスするのは絶対に嫌だ」  そう言いながらも鷺沢を抱きたくて仕方がなかった。  もう気が狂いそうだ。  荒れ狂う心臓を空いている右手で押さえた。 「あなたのことが好きです。本気で好きです。体なんかいらない。俺はあなたの心が欲しい!」  健人の叫ぶ声がリビングに響く。  ――あなたの心が欲しいんです。  そう、鷺沢の心が欲しい。  番じゃなくて、運命の相手じゃなくて、あなた自身が欲しい。  あなたを恋人として――抱きたい。
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