【10】甘い距離

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 その後、しばらくの間はエアポケットのような静かな時間が過ぎた。健人は暇を見ては、一人でN公園の巡回を続けていた。もちろん鷺沢には秘密の内偵だ。鷺沢が追っている男の手掛かりは何一つつかめなかったが、諦めずに捜査を継続することが重要だと分かっていた。性犯罪者の再犯率は高い。オメガに対してヘイト行為を繰り返しているグループの動向も気になっていた。何よりも鷺沢自身を傷つけるような危険な内偵をさせたくなかった。健人は本部時代の伝手を頼って男の捜査資料を手に入れ、山手台警察署の刑事にも捜査内容を報告した。  みなとみらい臨港署では保管庫の電子ロックが漏電で機能しなくなるアクシデントがあったものの、署長公舎への嫌がらせや脅迫などは起こらず、おおむね平穏で、健人は日々の業務を粛々とこなした。
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