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ドラッグストアで被覆材タイプの包帯と水の買い物を済ませ、公園に戻ると男の姿はなかった。
「ああ、やっぱりな……なんかそんな気がしてた」
ベンチを見ると健人が敷いたハンカチが消えていた。代わりにカンボクの花が一つ置いてあった。
「あれは……天使だったかな」
花を手に取って見ると、白くて小さな花弁が幾重にも重なっていた。夜風を受けて揺れている。
――さっきの男みたいだ。
微かに甘い香りがした。
まだ手のひらに男の手の感触が残っている。細くてしなやかな手だった。
「綺麗だな……」
なぜか名残惜しい気分になり、健人はその花を大事そうに紙袋の中へ仕舞った。
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