【2】そして、再び

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 この世には男女の性別以外に三種類の性がある。アルファ性、ベータ性、オメガ性だ。アルファ性は生物学的に優れた特性を持ち、男女の性別及び三種類のバース性の中で最も高い位置に君臨する存在である。人口の七パーセントに当たる人間がアルファで、政財界をはじめスポーツ、芸能、芸術など、ほとんどの業界でトップを取る人間がこのバース性に属しているといわれている。見た目も華やかで人目を引く容姿をしていることが多い。男女の性別関係なく特別な性器を有し、相手を妊娠させる性機能を持つ。  アルファ性はアルファとオメガの番カップルのみから生まれる。その他の組み合わせから生まれることはまずない。運命の番から生まれる〝稀覯種〟のアルファはその中でも特別な存在といえた。  ベータ性は男女のセックスタイプと同じでごく普通の人間を指す。アルファの才能に嫉妬したり、オメガの魅力に畏怖を覚えたりする大多数で、最も一般的なバース性に属する。ほとんどのベータ性は同じベータとカップルになりベータ性の子を持つ。アルファやオメガと交わっても生まれる子どもは、ほぼ百パーセントの確率でベータ性になる。  オメガ性は三種類のバース性の中でも特別な存在で、思春期にならないとその性質が分からない。ヒートと呼ばれる発情期を迎えることでオメガかどうか判断される。  アルファとオメガの番から生まれた子どもは思春期を迎えるまでミュートと呼ばれる。色のない「無」という意味で、その存在がバース性のカリスマとされるアルファなのか忌み嫌われるオメガなのか本人でさえも分からないのが呼称の理由だ。  健人も十三歳の夏を迎えるまではミュートだった。精通あるいは初経を迎えた時に発情(ヒート)した者がオメガとなる。本能的な発情を迎えるまでバース性が分からないのが、オメガとアルファの子どもに課された宿命でもあった。
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