【2】そして、再び

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 午後二時から始まった署長就任の挨拶は、建屋の最上階にある講堂で行われた。鷺沢は二百名近い署員を前に訓示を行い、その内容は慣例的なものではなく鷺沢自身の言葉によるものだった。  ――上意下達の警察組織ではなく、住民に愛される所轄署、住民から頼りにされる所轄署を目指して皆で力を合わせて頑張っていきましょう。階級やバース性などで凝り固まった概念を捨て去って、ここ横浜みなとみらいから新しい風を吹かせることが、自身に課せられた責務だと思っています。  本来であれば、各自問題を起こさずに二年間を粛々と過ごし、無傷のまま自分を警察庁に返してくれよと釘を刺すところだったが、鷺沢は階級関係なく同じ警察官としてやっていきたいと言う。半信半疑ではあったが、何かが変わる気がした。  健人は素直に鷺沢の言葉を信じたいと思った。同時にそれだけの価値がある男だと直感した。  この男は、お仕着せのキャリアではない。正直で信念のある、本物の警察官だ。  ――まあ、ちょっと裏表が激しい腹黒天使だけどな。  健人は訓示を聞きながら、オメガのキャリアが新しい時代を運んでくれる予感に胸を躍らせた。
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