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広大な砂丘から一粒の砂金を見つけるような、そんな凄い運命が自分に降りかかってくるとは思えない。健人のこれまでの人生は至って普通だった。
今年、二十七歳になる健人は、アルファでありながら地元の国立大学を卒業し、神奈川県警の採用試験を受けて警察官になった。警察庁採用の警察官僚には全くと言っていいほど興味がなかった。周囲からはキャリアでもセミキャリアでも官庁選ばずになれるのにと溜息をつかれたが、健人にとっては生まれ育った横浜で警察官を全うするのが子どもの頃からの夢であり、誇りだった。
国家権力はいらない。権力の椅子取りゲームで己の人生を無為に終わらせるのではなく、これまでお世話になった県民と市民の安全のために働きたい。健人は幼い頃から誰かの役に立つことに無上の喜びを感じていた。両親や周囲の人間を笑顔にすることが何ものにも代えがたい幸せだった。勤務する署内では〝能天気アルファ〟と揶揄されることもあったが、そんなふうに気軽に弄られることも嬉しかった。
「結局は、仕事も恋も自力で頑張るしかないよな……」
そう自分に言い聞かせながら夜道を歩く。愛と引き出物の重みは容赦なく手に食い込んだままだった。
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