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猫の国
「ママ! ママってば!」
「んー……なに……?」
香織の呼ぶ声に起こされる。
眠りを妨げられ、回らない頭で。
「かおちゃんね、いかなきゃいけないの」
「行くって……どこへ!?」
心地好い微睡みの中で浮いていた感覚が一気に覚める。
「う~ん……ねこのくに?」
「猫の国!?」
驚いて跳び起きる。
見ると香織の頭に猫の耳が生えていた。
小さなその手は背中が鯖模様、手足とお腹が真っ白な毛で覆われた二足歩行の猫の前足と繋がれていた。
「……待って!」
行くのを引き留めようと思うのだが、身体が鉛のように重くて、思うように動かない。
「かおりん!」
声に反応するかのように香織のお尻--何故か洋服を着ているその上--からぴょこん、と尻尾が生えた。
猫と繋いでいた手に白い細かな毛がワサワサッと生え、ぷっくりとした肉球と長い爪が伸びる。
「香織!」
振り返った香織の顔には長い髭が生え、白と茶と黒の斑模様の猫になっていた。
「にゃあ~ん」
詩織に『かおにゃん』と呼ばれた時のポーズをする。
「やだやだやだ! 行っちゃダメ!」
「ママが悪いんだよ」
香織の隣にいた鯖白模様の猫が振り返ってそう言った。
「あんなに可愛いがってくれたのに、詩織と香織が生まれてからボクのこと見向きもしなくなって」
「……トラちゃん」
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