発覚まで

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 ある日の事、一人の小説家が頭を抱えていた。次の作品のネタが思い浮かばずに悩み苦しんでいた。数年前にたまたま応募したミステリー小説大賞に応募して佳作を受賞した事により作家としてのデビューに成功したのだが、二作目からが上手く行かなくて編集部からも「君、二作目以降面白くないよ。もう少し真面目に話を考えたらどうだ」と冷遇される鳴かず飛ばずの作家の仲間入りをしていた。  なんだかんだで10作以上出版はされたものの、部数は少なく作家としての給料は雀の涙程であり、いわゆる「貯金を食いつぶすだけのニート」に近い状態であった。そんな零細作家生活を送っている最中、担当よりついに最後通告が来た。 「次、売れなかったらもう筆折って堅気の仕事を探すんだな」事実上のクビ宣告である。こんな事もあり小説家は作家生活を続ける為に必死に寝る間も惜しんで小説を書いていたが、ネタが尽きた。今までミステリー作品をずっと書き続けて来たがいずれも「人が殺されてそれを探偵が暴く」と言った感じのものしか書いていなかった。このジャンルは開拓され切っているのか何を考えても先人たちが書いたものの猿真似にしかならなかった。 「ああ、サスペンスドラマが憎い」 小説家は白紙の文書ファイルを見つめながらため息を吐いた。こうしてため息を吐くのは何回目だろうか。いっその事流行りの異世界転生にミステリーを混ぜてやろうかと思ったが厳しい家庭に育ちアニメや漫画に触れた事がなかった小説家には全く畑違いで「転生先」の世界をイメージする事が出来ないので諦めた。
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