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握った手
手を握ると、懐かしいぬくもりを感じる。
それとともにかつての記憶が私の脳裏に蘇る。
小さい頃の私は、とても我儘な性格だった。
一人っ子であったことも、少なからず影響があったと思う。
特に幼稚園に入る以前は、共同生活をする相手が親しかいなかっため、傍若無人も甚だしかった。
ある冬の日のこと。
朝のテレビでやっていた戦隊モノの番組で、新しいロボットが登場したことがあった。
そのロボットは主人公たちが苦戦していた敵をいとも簡単にやっつける、という鮮烈なデビュー戦を果たし、私を興奮させた。
テレビが終わると、私はすぐに、
「これほしい!」
と、母に要求した。
「だめ。誕生日まで我慢」
そういって母は私をあしらった。
誕生日は一ヶ月ほど後であり、それが待てるほど私は気が長くなかった。
かって、かって、かって!
やだ、やだ、やだ!
何回も何回も繰り返し、ひたすら母に要求を続けた。
今考えると、そうすれば母なら何とかしてくれる、という打算的な考えもあったたのだと思う。
そして一週間後。
母はついに根をあげ、私を連れて一緒に買い物に行ってくれた。
だが、思わぬ事態が起こった。
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