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 怒らせないように、悪意を持たせないように。  男という生き物はプライドで出来ている。本能的な攻撃性を持っている。そして性格は多様で趣味嗜好も様々だ。  その上繊細で傷つきやすいときている。扱い方を間違えれば、まりのような小娘は簡単に痛めつけられてしまう。殺されることは怖くないが、痛い思いをするのはもうごめんだった。  だからまりは欠片たちに身をゆだね、上手く振る舞い仕事をこなした。この男にはひたすら従順に。この男は仏頂面を嫌う。この男はまりの気を引きたくて仕方がないから、わざと冷たく振る舞っておいたほうがいい。  自我を殺して合わせてしまえば、男ほど操縦しやすい生き物はなかった。妊娠の心配もない。死ぬまでの時間を快適に過ごしていくために、まりは日々身体を売り続けた。  客はどんどん増えていく。その中に、過去に同じようにまりを買った魂がいくつもいることに気付いた。  やはり人間は輪廻転生を繰り返している。  そして魂とは、生まれ変わっても大して進歩することもなく、同じ場所をぐるぐる回り続ける二十日鼠のようなものなのだと、まりは思い知ったのだった。
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